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IPEの種 2/12/2007
末っ子の誕生日に買ってやったチョコケーキがとても美味しかったです.しかし,少々大きめのケーキでも,すぐに食べ尽くされるのは彼らの食欲がすばらしいからか, ・・・出産や,子供が小さいときにだけ優遇措置を与える少子化対策なんて,何か間違っていないか,と思いました.
ハンフリー・ボガートとイングリット・バーグマンの名作『カサブランカ』を観ました.1941年,ナチス・ドイツに占領されたフランスなど,ヨーロッパ大陸から,アメリカへの亡命を望む者たちがアフリカ北部のフランス領にある港町,カサブランカに集まります.パリ占領の夜,なぜ駅に来なかったのか,たとえ愛し合った男と女にも,言えない理由がありました.古典的な映画の背景や,筋書き,人物,しゃれた台詞と余韻に,満足しました.
戦争や正義にかかわることを拒んだボダートが,「お前は何人だ?」とゲシュタポの少佐に訊かれたとき,「私は酔っ払いだ.I’m drunken.」と応えます.人はドイツ人でも,フランス人でも,アメリカ人でもない.
朝日新聞の書評欄に,対照的な二冊の本が載っていました.渡辺京二『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)と,内田樹『下流志向』,です.
江戸の時代小説を読めば,懐かしい町並や自然,魅力的な人物たちに出会います.そんな世界が本当に会ったのかどうか,私には分からなかったのですが,日本に来た外国からの訪問者が当時の印象を記録したものは,なるほど貴重です.誰しも旅をすれば,異なる社会に感銘を受け,さまざまな文明の質について驚くほど鋭い観察を残すのではないでしょうか.
異国の訪問者を驚倒させたという,その「親切さともてなし」,「物や自然に対する,畏敬の深さ」を,異なる時代,異なる社会として,「日本人のありよう」や「美徳」を,私も知りたいと思います.
他方,『下流志向』を紹介する中条省平氏の文章は,おそらく本の内容を反映して,日本の子供や若者を辛らつに描きます.かつて子供は,掃除やお料理,水まき,風呂洗い,など,家事を手伝うことで誉められ,親の仕事を見て育ったと思います.今では,いつも勉強しなければならず,ほとんど,その成績だけで評価されます.親たちも家事を手伝えとは言いません.
江戸時代と違って,子供たちは余りにも早く,消費者として自己を確立します.潤沢なこづかいを持って,好きな商品を選択することがすべてです.その身分や商品の背景を知る必要はありません.「何の役に立つのか?」と,消費者は問います.しかし,自分の側は問われない.商品を選択する価値観が貧困であることを棚に上げて,自分の好き嫌いだけで,あたかも世界のすべてを選択できる・・・かのように.十分なカネさえあれば.
役に立たないことはやらなくて良い.手っ取り早くお金が手に入るなら,何をやっても良い.その結果として,彼・彼女たちは大学の授業に出席せず,AV女優やホストになって稼ぐのです.仕事のレートで選択すれば,そうするのが賢い.それが当然じゃないか?
平等で,透明な,おカネの論理.最後は,切り刻まれてしまう自分を守ることもできない.そこには,社会制度や人間の資質が入っていません.「そんな絶望的に見える日本の将来のなかで,余生は大学教師をやめて,武道の道場で地域の子供たちを教えてすごそう,と著者は考えている.」
失われた自然や,失われた町並だけでなく,失われた心情や人間の生き方を取り戻すことはできないのでしょうか?
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