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IPEの風 3/12/2007

隅田川の七福神をめぐり,谷中の霊園や日暮里界隈も歩きました.時代小説の舞台です.布袋様というのは実在の人物で,黄色い袋を担いで歩き,どこでも貧しい者に惜しみなく与えた,という話が書いてありました.高僧として尊敬を集め,布袋様のために喜捨を申し出る金持ちが多くいたのではないか,と思います.

死ぬまでに1冊だけ本を出すとしたら,・・・と私は研究会に集まっていただいた皆さんに説明しました.今まで書いた論説は,既存の研究を整理することに終始したように思いました.何か,自分が書きたいことだけ書いて,学生たちと話し合えるような本を作りたい,と.

グローバリゼーションとグローバリズムを区別し,対比し,関連付けることで,私の議論は進みます.グローバリゼーションを理解するために,私たちはさまざまなイメージや言葉を使って現実との出会いを結びつけ,自分の理想や恐怖も付加します.それでも混乱を収拾できないことが不安であれば,グローバリズムを信奉します.

グローバリズムなしに,グローバリゼーションは語れないでしょう.グローバリゼーションは現実に起きていると思いますが,何がリアルなのか,これは論証なのか,事実なのか,イデオロギーなのか,デマゴギーなのか,プロパガンダに過ぎない,・・・という囁きや絶叫を遮断して,個室でクラッシックを聞くようなわけにはいかないでしょう.

これは何だろうか? と迷っていたとき,桜井さんからもらったメールに,「ソース・ブック」とありました.これはいいな,と思います.「グローバリゼーションのソース・ブック」を作ります.論争のソース・ブック,事例のソース・ブック,イデオロギーのソース・ブック.

前田さんが私の議論から論点を探して話し合うナビゲーターでした.帝国主義について,繰り返し議論したと思います.ブッシュ政権に限らず,私は「帝国」や「帝国主義」の議論が,IPEの一つの起源だと思います.それはマルクス主義の伝統的な議論も,ホブソンやコーエンやドイルの帝国論も,継承する興味深い内容が多くあると思います.でも,話はもっぱらギルピンでしたね.領土的な支配秩序を,市場取引の拡大やグローバリゼーションの影響と対比し,ある意味では救済するような,「合理的帝国主義」や「国家の覚醒」,「地域共同体」を展望したかったわけです.

これは何か? もっと展開するべきではないか? 疑問を積み重ねることが目的なのか? ・・・だから,「詩的IPE」,「つぶやきのIPE」という前田さんの命名に感謝します.100個の疑問,100個の反論が起きたら,この本は成功なんだ,と私は山川さんと話しました.

グローバリゼーションのように大きな社会変動の中にあるせいで,鳥インフルエンザ・ウィルスみたいに,私たちはグローバリズムの餌食となります.何かを非難したり,誰かに救済を求めたり,自分が強いられた境遇に対して納得できる説明を示してほしい,と望むからです.それが正しい説明かどうか,残念ながら分かりません.それでも,自分の努力が無駄でないことを信じるために,誰もがグローバリズムを信奉します.

現実の選択肢や,現実に関する議論,そのイメージや認識そのものが,非常に限られており,閉塞していると思いませんか? 私たちは,これがグローバリゼーションであり,ここから逃れる道は無い,というイデオロギーに支配されています.日本の指導的な立場にある人々が,社会を革新するアイデアを示せないのも,もっと多くの選択肢があるはずなのに,多くの人々が固定したイデオロギーを符牒のように交わし合って,人々の自由な発想を死滅させているからではないか? 私たちは,自由な想像力さえ持てないのか?

私には,こんな本があっても良いではないか,と思えるのです.小さくとも,私が集めた「想像力のソース・ブック」を作りたいです.

上野公園の近く,冷たい風が吹いて,雹が降り出したにもかかわらず,自由貿易とバグワッティによるグローバリゼーションの擁護を,山川さんと話し合いました.私は,ブッシュ政権やアメリカの帝国化を支持しませんが,国際秩序が国家によって組織されている現実を改善する工夫を歓迎します.ウィリアムソンやバグワッティは優れたアイデアを示せる天才なのです.私は市場や価格が間違っているとして,その否定を目指すわけではありません.社会的分業や自由貿易は,市場がもたらす社会関係を正しく理解する重要なアイデアです.それらを利用しなければならないと思います.

しかし,その通り,バグワッティはミキサーです.自由貿易理論やWTOにふさわしい形でしか,批判を受け入れません.多分,もっと多様な模索や思想を,許容できる国際システムが望ましいでしょう.

東京の研究会で,こんなことを考えました.ご協力に感謝します.また会って,楽しく話し合いましょう.

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