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IPEの風 4/16/2007
金曜日の夜,NHKプライム10で,「春節・上海巨大バスターミナル」を観ました.地下1階,地上3階,毎日360路線で,・・・地球を9周する! 春節の里帰りにターミナルを利用する乗客の数は,最高1日5万7000人に達しました.
故郷を遠く離れて,およそ400万人の出稼ぎ労働者たちが上海に住み,近代都市の建設やさまざまな経済活動を支えています.彼らは年に1度だけ,家族に会うため,何千キロも離れた遠い故郷まで長距離バスに乗って帰るのです.
ある労働者たちは会社が給与を支払ってくれず,春節のバス代だけくれたから故郷に帰る,と言います.(企業が支払わないので)仕方ない,とお土産もありません.他の若い労働者の夫婦はバスに乗り遅れ,1か月分の給与に近い切符が無駄になってしまいました.しかし,また買いなおします.彼らは朝食を節約しますが,家族のために買ったお土産を一杯持って帰ります.
強盗に遭った労働者もいます.彼の1年分の稼ぎである6400元を盗られました.強盗はそれでもバス代を置いていってくれたそうです.あるいは,文字の読めない女性が,バスの発車時刻を過ぎてしまった,と管理センターを訪れます.スタッフが同情して切符を払い戻してやりますが,自分で新しい切符を買うことができません.途方にくれて階段で泣き続けていると,親切な男性が切符を買ってくれます.
自分は学校に行ってないから.自分たちは貧乏だから.はっきりそう言う夫婦が,なぜかとても嬉しそうに笑いかけます.なぜ上海に来たのか? 彼の答はありません.懸命に働くことしかできないから.次の出稼ぎ先を探すよ,とバスに乗ります.自分たちの夢はこの子供だけだ.もしこの子が賢かったら,大学に行かせてやりたい,と彼らは笑顔でバスに乗ります.
バスには3人の運転手が乗り込んで,交代で運転します.彼らの多くも出稼ぎです.会社は彼らのことを思い,よくしてくれる,と感謝します.忙しい中,家族を職場に呼んで,会社の用意してくれた特別なカモ鍋をご馳走します.
ターミナルの向かいはラーメン屋さん.見事な手並みで麺を伸ばし,あるいは中華包丁で切ってスープに飛ばします.ターミナルには余りの混雑に泣き出す女性がいます.何時間も遅れたバスを待って声を荒げる人.切符を買う行列に割り込んで乱闘になる場面も映りました(中国当局が許した?).しかし,バスに乗り込む人々の顔には,故郷に帰る喜びが満ちています.
中国には「尊老愛幼」という言葉がある.家族がいるから,厳しい労働にも耐えられる.家族と一緒に故郷で春節を楽しむため,彼らはまた1年を働くことができる.・・・
そして,春節が来ました.ターミナルは無人です.がらんとした建物の外で,花火や爆竹が鳴っています.
利用者の急増を受けて,上海市は新しいバスターミナルの建設を計画しています.再開発が予定される下町には,やはり出稼ぎとしてやって来て上海に住み着いた,新上海人が多くいます.若いときから夫婦で荷物運びをした,という78歳の婦人も,すでに夫は亡くなりました.故郷に帰りたいが,もう歳を取りすぎたよ,と言います.でも,もう一度だけ,帰りたい,と.
無名の人たちの向上心が,社会全体のダイナミックな活動を支えます.彼らの姿には,活発な経済発展に生きることの喜びと誇り,意欲が溢れていました.
巨大な格差もあるけれど,中国は発展するでしょう.環境破壊やエネルギー危機も,金融不安や貿易摩擦もあります.しかし,彼ら自身の内にあるダイナミズムが尽きない限り,それらを克服すると思います.中国自身が多極的で,競争的に革新を実現する市場の機会に満ちている以上,政府の規制や先行する業界,世界企業の独占などに彼らは屈しないでしょう.
彼らは熱烈に働き続けています.中国のダイナミズムを私たちにも分けてほしい,と思いました.彼らが国内的には社会統合を維持し,対外的に平和と協力を重視するように,その指導者や支配的なイデオロギーの動向を注視したいです.
温家宝首相が来日し,京都では御所の迎賓館に来たようです.大学院のゼミに向かうとき,大学の正門周辺にも厳しい警備が敷かれていました.
翌日,「中国鉄道大紀行:ラサ〜西寧」を観ました.出発点は,中国によるチベット植民地化政策の道具である,と言われる高原鉄道のラサ駅.それは,この高山に守られてきた聖地にまでおよぶ,驚異的な中国近代化(現代化)の記念碑です.これほどの投資が,真に独立したチベット政府との協力で進められていたなら,もっと大きな称賛を得たはずです.この鉄道がもたらす未来は,まだ,誰のものでもないのです.
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