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IPEの風 4/23/2007
グローバリゼーションの良いところと,地域の生産物を地域で消費する生活を築く理想とは,絶対に矛盾するのか? もしそれらを両立可能にする制度があるとしたら,それは何だろうか? ・・・そんなことを大学院のゼミで話し合いました.
バクダッドでは自爆テロや自動車爆弾が一日に何度も爆発し,そのたびに100人を超える死者を出しています.中東地域におけるイランの台頭とアメリカの退潮は,和平の新しい枠組みを見出せないまま,死者の数を増やしています.
ブッシュ政権が出したその答えの一部が,トウモロコシをエタノールに変えて石油と中東地域への依存を減らす,というのは信じがたい話です.世界の穀物価格を上昇させ,土地の砂漠化や貧困の増大を促しながら,穀物からわざわざ作るガソリンでアメリカ人はフリーウェイで自動車を走らせる! そんなことがアメリカ政府にとってイラク撤退の口実になるのでしょうか?
長崎市長テロ射殺事件について,暴力団関係者や右翼団体を十分に監視し,こうした団体の暴力行為や政治宣伝・圧力を阻止できていない現状に,強い不満を感じました.
ジャーナリストの斎藤貴男氏が,改憲のための国民投票法案を議論する中で,平和憲法や核廃絶を訴えている長崎市長が殺害されたテロであることを,マスコミは無視している.また,安倍首相の表面的なコメントは,テロを断固阻止するという気迫を欠いており,政治指導者としてふさわしくない,という趣旨の発言をしました.その通りだと思います.警察は事件の全容を解明し,マスコミは報道し続けてほしいです.
バージニア工科大学大量殺人により,銃,人種,貧富の差,差別・特権,暴力を容認するような文化,過激主義,個人主義,失われた家族や公共性・親和圏,・・・が議論されています.暴力(の扱い)は社会や国家の質を反映している,と思います.
しかし,毎日90人が自殺している(つまり,バージニアの大量殺人が毎日3件も起きる)という日本の状態に,私はもっとショックを受けます.政治家たちは自殺者の出た家族や地域社会を慰め,励ますために,彼らのもとを訪れているでしょうか? その生活を再建し,社会状態を改善しようと呼びかけていないとしたら,それはなぜなのか?
国民投票法案について,朝日新聞は,最低投票率を憲法改正の条件に加えるように強く求めています.自殺者が多い社会,政治において発言するより棄権する(させる)社会を,もっと真剣に変えてほしいです.
自分の毎日の生活が,積み重ねてきた年齢と違和感を生じる,そんな感覚がときに強くなります.もっと違う人生があったかもしれない.どこか違う町で,違う家族と,違う仕事に励んでいる自分がいるのではないか.
「早く引退できたら何がしたいか?」 と聞かれて,古本屋と喫茶店かな,と答えました.ブックオフとスターバックスは人々の需要に応えました.私の印象では,衰微し続ける古本屋と喫茶店を組織する新しい方法を見出せたら,きっと素敵な社会革新のための小さな庭が,街のあちこちにできるでしょう.
映画『メン・イン・ブラック “Men in Black”』をまねて “Men in Books”なんてどうでしょう? MIB協賛・加盟店として改装・再出発し,日本全国のネットワークを目指します.田舎のMIB店はイギリス風B&Bを兼ねて,自然や歴史の散策・ハイキングコースを開拓してください.
都会の中で気楽に立ち寄れる場所というのは,実際,なかなか無いものです.そこに行けば会話が楽しめ,気の利いた書籍があふれ,世界のニュースや音楽が静かに流れている場所.どこまでも他人ばかりの街を歩く人々が,安心して休息し,ときには新しい友人にもなれる場所.
古本だけでなく,新刊本や古典を紹介し,同人誌や書評を並べ,読書会や朗読会が開かれます.世界の文学,諸言語を勉強できて,世界各地の人が見た日本文学論,日本人・日本社会論を聞くこともできる.世界情勢や主要な政策論争を,このお店の端末で調べて,世界中の店とBBSやブログを共有し,話し合います.大企業よりも個人企業,大都市よりも地方分散,ハイテク・メディア・趣味・娯楽・ビジュアル・情報・知識・教育産業と農業を振興する金融の拠点にもなります.
金曜日は午後のゼミだけでした.遅く家を出て大学へ向かい,一駅先の鞍馬口で降りて,研究室へ行く前に古本を買いました.福井晴敏の『亡国のイージス』(集英社文庫)です.
ル・カレのようなスパイ小説やボイドのような戦争小説を,日本人は決して書けないだろう,と私は今まで思っていました.しかし,それは間違いでした.巨大な構想を動かしながら,よくここまでディテールや印象的な挿話,自然な対話,独白,技術や政治の背景,虚構の人物と彼らの人間関係に滲み出す存在感・心情を描き出せるものだ,と嘆息します.
どんな分野にも,天才や天分というものがあると思います.文庫本とはいえ,上下で1000ページ以上の紙を埋め尽くす文字が,隙間無く,息付くことも許さないほど濃密な物語の時間を造形し,放出しています.
社会活動や政治の分野,歴史家,数学者,経済学者,言語学者,・・・本来,特別な天分が必要だ,と今さらながら思います.彼らは水中を泳ぎまわる魚です.溺れないように,かろうじて水面から顔を出すだけで必死な,ヒトではありません.
原作・手塚治虫,脚本・大友克洋,監督・りんたろう『メトロポリス』を,子供に見せてやろうと思って借りていました.忘れていたら一週間が過ぎてしまい,返す前に独りで観ながら,実に良くできていることに感銘を受けました.ここにも,自らの天分を発揮した人たちがいます.
つまらない映画やバラエティー番組がテレビの時間を埋めてしまい,そんな中に並ぶ「有名人」や「アイドル」の生活に若者たちがあこがれ,彼らの生態をまねるようになったのは,一体,いつの頃からか? どうして,こんなにすばらしい日本のアニメ映画がもっと称賛され,若者たちがその才能とエネルギーを遮二無二に注ぎ込める舞台にならないのか?
飛び切り優れた才能や発想を,もっと重視するべきです.その潜在力にあふれた彼・彼女らを見つけ出して,自由に,そして積極的に,磨いてやることこそ,これからの教育機関や産業界の目標となるでしょう.それと同時に,決して特別な才能や天分を持たなくても,社会の一員として平等が重視され,安心して自分たちの職場を愛し,だからこそ自分に与えられた職分を全うして社会に貢献したい,という強い使命感,自尊心,仲間としての道徳や帰属意識を持つ.そんな自分たちを信じることができたら,私たちはもっと「幸せ」ではないでしょうか.
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