******************************

IPEの風 7/2/2007

宮沢喜一氏が亡くなりました.

自ら代表団の一人として加わったサンフランシスコ講和会議で,安全保障をアメリカに全面的に依存する条約を日本政府は結びます.それは大きな制約ともなったが,日本は経済復興のために全力を尽くすべきだという吉田首相の考えは正しかった,と宮沢氏は述べました.

宮沢氏はプラザ合意の翌年に大蔵大臣になり,円高を止めるために奔走しました.その後,バブル崩壊後の金融危機の際,再び大蔵大臣となってシステムの安定化に尽力します.アジア通貨危機についても,有名な「宮沢イニシアティブ」を発表しました.

宮沢氏は,戦後政治家の中で抜群の知性を持ちながら,おそらくそれゆえに,日本の政治家の多くから疎遠な存在であった,という趣旨の発言を,中曽根元首相がしました.

翌朝,久間防衛大臣が,原爆投下はしようがなかった,と発言したことを知りました.小泉ブームに乗じて戦後日本と国際レジームの改造を吹聴した安倍内閣の迷走が続きます.

同じ朝のNHKニュースで,被爆者の婦人がスペインのゲルニカを訪問し,ドイツに謝罪を求め続けて,ついに成功したゲルニカの男性と握手したことを知りました.

次々と重要法案を通過させる自民・公明の与党に対して,不信任案を説明する民主党議員は語りました.「こんな内閣は見たことがない.こんな国会も見たことがない.」

イギリスではトニー・ブレアが首相を引退し,議員も辞職して,中東和平の特使になりました.後任にはゴードン・ブラウンが就きました.

アメリカの民主党大統領候補として,まさに彗星として出現したバラク・オバマは,ケニアの羊飼いとして育った男の息子です.オバマの父は,奨学金を得て,ブリキ屋根の学校から魔法の国,アメリカで学ぶため,海を渡りました.アメリカで彼は,カンザスから来た白人女性と結婚します.彼らは裕福ではなかったけれど,その息子はハーヴァードに進みました.この地球上で,私のような生い立ちを語れる国は他にない,とオバマは誇ります.

オバマはアメリカの有権者が待ち望んだ大統領候補なのです.政治の旧弊を排し,利己的でなく,アメリカ人民の核になる良識を示しています.そして,最高の雄弁家です.

3年前は,誰もオバマなど知らなかった,とThe Economistの記事は書きます.イリノイの田舎政治家に過ぎませんでした.2004年の上院議員候補として注目され,勝利します.彼が黒人であることを,一世代前なら候補として受け入れがたい理由に挙げたでしょう.しかし今,アメリカ人の多くが世界で嫌われ,自分たちの良心を示したがっています.上流階級出身の白人ではない,すぐれた候補を大統領として認めたい,自分たちは偽善者ではない,と彼らは思います.

宮沢喜一が自民党をぶち壊し,日本経済を再生して,戦後レジームを改革したい,というのであれば,その中身を真剣に受け止めたでしょう.しかし,安倍内閣が唱える「美しい日本」が政治的なレトリックとして何か重要な内容を伝えているでしょうか?

彼ではない.日本の政治にも,彗星が現れるときがあるのでしょうか?

******************************