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IPEの風 7/9/2007
憲法改正を最優先し,国民投票の枠組みを作る,物言う日本外交,拉致問題の解決を最優先して北朝鮮と交渉する強硬姿勢,防衛庁を防衛省に格上げ,集団的自衛権の合憲的解釈を推進,「愛国心」教育を教育基本法に明記,戦後レジームの転換を提唱,そして,郵政民営化に反対した議員たちを復党させ,「美しい国」を宣伝した.
これらが,「小泉構造改革ブーム」の大勝による与党多数支配を引き継いだ,安倍政権の成果であり,推進した主要政策でした.しかし,国民が心配し,憤慨し,あるいは,望んだのは,雇用不安,ワーキング・プアや派遣労働者の生活苦,所得あるいは地域格差の是正,いじめ(自殺)問題,年金問題の解消,地方自治体の財政悪化・破産,老人介護・医療費問題,企業収益の改善にもかかわらず抑制される賃金,自殺者の増加,コムスンとその会長の莫大な資産,地価・株価・金利の変動,生活状態を改善してほしい,ということでした.
政治とは可能性の業,その芸術だ,と言われます.権力を握る者は,争点や主要な課題を示すことができます.そして,主要な利害関係者を集めて調整や和解を組織し,規制や補助金を使って,彼らを脅したり宥めたりできます.執行権力を握ったからには,行政府の持つ膨大な知識・情報・スタッフを動員することができるのです.
しかし,天下りの監視や年金問題の先送りを多数派の会期延長で無理やりに決めた,と言う安倍氏の戦略は,バラバラです.
小泉氏は(少なくとも執行権力者の地位にあったときは)賢明にも,政治の争点を絞り込み,大臣を変えませんでした.政府に対する国民の強い支持を得て,外交においてはそれほど成功しなかったとしても,国民に向けたパフォーマンスは常に関心を集めました.そして何より,選挙において的確に,有権者を動かす政治の言葉を見出し,それによって勝利したのです.
だから安倍首相であれ,小沢代表であれ,政治家の誰もが,選挙の前には国民の不満や希望に形を与えなければなりません.ロシアのプーチン大統領が冷戦のレトリックを使ってブッシュやNATOを激しく批判したように,ポーランドの首相がナチスによる戦禍の記憶についてドイツを非難したように,ニューヨークのブルームバーグ市長が二大政党を離れて第三候補として大統領選挙に立つ意欲を示したように,アル・ゴアが数百万年の歴史をさかのぼって火星とは異なる地球の運命を守ろうと呼びかけたように.
あなたが日本を代表して,国民の利益を守り,その正しい道を見通す力のある政治家だということを,今こそ示してほしいです.
イギリスのブラウン首相はブレア後の政府に信頼を回復し,国民を一つにまとめる憲法改正を唱えました.クリス・パッテンは10年前の香港返還を前に民主主義の種を撒き,サルコジ大統領は労働組合の反対やユーロ圏の解体という危険を冒してもフランスの改革に賭けると断言しました.ドイツのメルケル首相は投資ファンドと組んででも経済の転換を推進し,エスニック・クレンジングの大虐殺を経たルワンダではカガメ大統領が権力を握り,アフリカの希望と期待されています.
あなたも,選挙に向けて,日本を変える情熱と方策を示さなければなりません.そして,あなたの優れた演説,多くの国民が共感する優れた言葉の一撃によって,他の党派を圧倒する力を示してください.この選挙で国民があなたを明確に支持するとき,その時にだけ,あなたが執行権力を完全に掌握し,この国を変えるのです.
・・・少なくとも,その機会を手にする,ということでしょう.
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