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IPEの風 8/13/2007
北朝鮮や安倍内閣,イラク戦争などに刺激されて,今年の夏は戦争を身近に,重く,受け止めています.吉永小百合さんの朗読会を,NHK・BSで観ました.多くの子供たちに,心から話を聞かせることで感動を与える吉永さんの朗読は,本当に,素晴らしいと思います.
ユニクロによる古着の寄付について,小さな新聞記事を読みました.高地に暮らす難民には防寒のために,またアフリカの難民にとっては蚊によるマラリアなどの感染を予防するために,私たちの古着が再利用され,感謝されている,そんな話でした.お店の古着コーナーが,世界の貧困や難民を救援する仕組みに結びついていることを知るのは,深い,静かな喜びです.
人口減少に関するThe Economistの特集記事,医療保険制度についてジュリアーニ前ニューヨーク市長の意見,アメリカやヨーロッパの移民政策論争を読んで,私はこんなことを想いました.・・・
税制や保険制度,年金制度を介して,給与体系の新しいモデルを普及させてください.基本給は年功賃金の性格を残しながら,特別な能力や役職に応じた手当を大きくします.また,子どもや老人の生活支援を社会が分担するため,養育と介護には大幅な課税所得からの控除を認めてください.もし控除額に満たない基礎所得しかない場合,マイナスの課税,すなわち子供と老人のための最低所得保障を行ってはどうでしょうか? そして,勤続年数に応じた長期休暇や,新しい技術の習得,組織や職場の転換による革新を促す給与=雇用モデルを,企業も労働組合も協力して提示することです.それによって,非正規のパート・派遣労働者や外国人労働者の生活改善を実現する道筋を示し,女性・中高年への雇用差別をなくして,転職・再雇用も奨励できます.企業の分割や統合化,新企業の設立,地方への移転,などを反映させてはどうでしょう.
政府や公的機関に何ができるのか,なにをなすべきか,という論争を行うのが政治です.国民にとって重要な問題は何か? それを決めたら,解決に向けた提案を示してください.根本的なイデオロギー論争を避けてはいけません.
参議員選挙を受けて「日本はどうなる?」と議論する,NHK解説の特別版を観ました.いずれも的確な指摘で,あらためてNHKのジャーナリズムとしてのまじめさ,健全さに感心しました.
・・・郵政選挙における大勝によって傲慢になった部分がある.・・・日米同盟による安全保障や,社会保険庁による改革,介護法で,本当に安心できる生活が得られたか? ・・・小沢・民主党は,小泉改革の切り捨てた地方で有権者の自民党離れを推し進めた.農業や建設業における自民党の支持基盤が動いた.・・・しかし,民主党に対抗する政策はあるのか? ・・・景気は回復したが,成長の果実は少数者に偏っている.再チャレンジ,などの掛け声はよいけれど,何をしてくれたのか? ・・・国債累積や人口・労働力の減少,長期的な課題に応えていない.・・・
安倍氏が権力を得てから取り組んだ,教育改革や憲法改正は間違いでした.それは安倍氏の使命感やイデオロギーではあっても,国民の多数が首相に求めている改革ではない,ということを知るべきです.
私は安倍内閣を好みませんが,安倍首相が権力にとどまることも可能である以上,今後の的確な発言と行動によって支持率を回復し,長期政権も実現できると思います.たとえば,正規の労働市場から外れた人たちに対して,その能力の改善や雇用の機会を拡大しよう,と大企業や公共団体に呼びかけることです.
愛国心や自衛隊の海外派遣より,過去の日本兵が犯した蛮行を詫び,地方経済・中小企業・女性の雇用を助け,農産物市場の開放,移民・難民への段階的な開放政策,アジア地域統合の推進,などをめぐって,野党と一緒にアイデアを示したい,と語ってください.
しかし日曜日,フジテレビの朝の番組では,森元首相が安倍続投や内閣改造を楽しそうに,多分,かなり自分勝手に,語っていました.評論家たちに「旧来の枠を超えた発想」を求められても,権力の黒幕として満悦し,自分に無益な議論には何の関心も示さない,という単純さに呆れました.
NHK日曜討論では,参議院の新議長となった江田五月氏が,日本の民主主義を充実させたい,という意欲を示しました.民主主義には緊張感が大切です,と江田氏は真摯に語りました.民意は常に変化するのであって,参議院の役割や,ねじれの利点を積極的に理解しよう,という発言に,日本の政治が変わる可能性を見ます.情報を公開し(特に官僚は自民党だけでなく,野党にも積極的に情報を提供する),政治論争や発言を公開し(裏取引で決めない),意見の違いを超えて互いに浸透する,という新議長の姿勢に賛成です.
それに続けて,田中直樹や山口二郎など,5人の識者が意見を述べ合いました.その内容も充実していました.冒頭の,安倍政権(と自民党「改革路線」継続)を支持する田中氏と,自民党の小泉・安倍路線を鋭く批判する山口氏の対照が見事でした.小沢・民主党が財政再建を無視して「ポピュリズム」に傾く,という懸念を何人かが示しました.山口氏は,「構造改革」と「日米関係」という「二つの思考停止」をやめて,説得力のある選択肢を示すべきだ,と主張しました.協力して改革を進める分野ではアイデアを出し合い,どうしても妥協できない点は争点を示して次の選挙で国民に問う.選挙によって政治の基本方針を決め,議論に生気をよみがえらせる,そんな国民へのメッセージを打ち出す政党に,今度こそ,改革の舵を取ってもらいましょう.
交通事故も,自殺も,世界中の難民も,優れた政治家がその意志と行動力を示せば,多くの改善策や再チャレンジを試みて繁栄に参加できたでしょう.政治家たちも休みなさい.そして,戦争を準備する同じ資金やスタッフを使って,この世界をもっと住みよいコミュニティーに変える,そんな力を見出すことです.
『グローバリゼーションを生きる』の初校が済みました.書店に出るまで,あと,約40日.
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